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2005.03.17

楽しいけれど淋しい本

 今寝床で読んでいるのは「かわいい子には旅をさせるな」(著・鷺沢萠)というタイトルのエッセイである。著者の名前を初見で正確に読める人は十中八九いないであろうから、読み方を付しておくと「さぎさわ・めぐむ」である。さらに付け加えておくと、すでに故人である。生年月日もおれと40日くらいしか違わないので、妙な親近感のある作家であった。

 このエッセイは著者の死後最初に出版された本であったと記憶している。出版社のウェブサイトに連載されていたものをまとめたもので、公式サイトであるOffice Meimeiにあった日記と同じようなテンションと、身を削るようなネタで読み手を楽しませてくれる。しかし、読んでいて複雑な心境になるのもまた事実なのである。出版社のサイトでの連載であるからそんなに重いネタの文章はないのだが、「書き手がすでにこの世の人ではない」ことを意識してしまうとやり場のないむなしさがこみ上げてくる。なんか読んでいても心の底から楽しめないときがあるのだ。

 この人の本分は純文学だったので、おれの読書の守備範囲からははずれてしまうのだが、文庫化された公式サイトの日記(「サギサワ@オフィスめめ」のタイトルで3冊が発売中。4月には最後になる4冊目が発売されるそうだ)や他のエッセイではずいぶんと楽しませてもらった。

 そんな彼女も、この本の中では不眠を筆頭に数多くのこころの病に悩まされていたことをカミングアウトしている。過呼吸や強迫観念性やうつといった厄介ものを抱えた状態で読者を楽しませる文章をつづることは、物書きでないおれなどには想像もつかない重労働だったことだろう。そんな状態であることなど文章の行間にすら感じないのだが、やはり精神的な疲れは彼女を自死の道へといざなったようである。それを思うと、やはり素直には楽しめない。エッセイは何度も読み返すおれではあるが、読んでいて複雑な気分になるものは、後にも先にもこの本くらいであろう。

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