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2005.07.17

『七都市物語シェアード・ワールズ』

 田中芳樹の「七都市物語」は、1990年に文庫化されるまで「存在は知っているが読んだことがない」作品であった。なにせ雑誌掲載の読み切り形式だったので、読む機会に恵まれなかったのである。それが待望の文庫化となり、実際に読んでみるとこれが取っつきにくかった。誰が主人公なのやら分からなかったからである。ところが何度か読み返すうちに面白く読めるようになってきた。田中氏の代表作である「銀河英雄伝説」と比べると、口も性格も悪いキャラクターたちの言動が楽しめるようになってきたのである。

 1994年にはこの中の1エピソードである『北極海戦線』がアニメ化されたが、これはフォローのしようがないくらいひどい出来だった。「アニメ化されるのであれば是非このシーンは見てみたい」と思っていたシーンがことごとくアニメ版には盛り込まれていなかったというのもあるが、原作からしてあまり長い話でないものを無理矢理前後編に引き延ばして発売するという形式そのものが間違っていたように思う。もっと身も蓋もない言い方をしてしまうと、アニメ版のスタッフは「七都市物語」の面白さの本質を理解していなかったのではないかとすら思える。

 文庫版が発売されてから15年も経って、なぜか版元の異なる徳間書店から「『七都市物語』シェアード・ワールズ」が刊行された。4人の作家による「七都市」の世界を舞台にした作品集である。4月30日初刷であるが、今ごろになって読んでみた。たまたま弟の部屋にあったのを借りてきたのである。

 これでおしなべて作品の出来がよければ「『七都市』のファンなら必読だ!」と勧めるところなのだが、そう言い切れないから困ってしまう。「メインディッシュを先に食べさせられて、前菜が後になって出てくるような構成になっている」という印象を受けた。特に最後に収録されている『もしも歴史に……』は、キャラクターの台詞がライトノベル風の記述をされているのが気に入らなかったし、なによりも原作にも登場するキャラクターであるユーリー・クルガンの性格が改変されているのが許し難い。

 「七都市」の、というよりはむしろ執筆陣のファンであるという人の方が楽しめるのかも知れない。

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コメント

 初めまして、二十数年来の田中ファンです。「七都市物語」は文庫で読みました。アニメも期待して見ましたが、おっしゃるとおり駄作としか言いようがない物でした。「銀河英雄伝説」のアニメとは全く水準からして違いましたね。
 シェアード・ワールドその物もどうも読む気になれません。やはり田中作品には田中さんの文体が一番似合うと思います。

投稿: アッテンボロー | 2005.07.17 21:01

コメントありがとうございます。お名前から拝察するに同盟派ですね? お仲間お仲間。
アニメの「七都市」も、「銀英伝」のように原作に忠実にやってくれれば十分鑑賞に堪えうる物になったと思うんですが、ヘタに別のエピソードの要素なんぞ持ち込んだものだから、ワケの分からないものになってしまったように思います。
なんでも後編のアフレコ時にはほとんど絵がない状態だったとか。このへんからしても制作側のお粗末さがうかがい知れます。
本文にも書きましたが、「シェアード・ワールズ」はすべての「七都市」ファンにお勧めできるものではありません。「これは意図的に文体を似せてるのかな?」という人もいるのですが、どちらかというと執筆者の個性の方が前に出てしまっているので、よほどのファンでなければ手を出さない方が無難でしょう。特にクルガンのファンは絶対読んではいけません(笑)。

投稿: ぶるない | 2005.07.21 10:32

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