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2005.08.11

義経はジンギスカンになった!…のか?

 新聞の最下段にはメジャーマイナーを問わず、出版社の出す本の広告が出ている。今朝、読売新聞朝刊のその欄に目をやったおれは「は?」という顔になった。左から2番目の欄にあった本のタイトルは「義経はジンギスカンになった!その6つの根拠」、著者は「歴史作家 丘英夫」(この「歴史作家」って怪しい肩書だなあ)とあった。

 「源義経は衣川で死なず、蝦夷を経由して大陸に渡ってジンギスカンになった」という説は、今更大見得を切ってまで発表するような大胆な仮説ではない。有名どころでは高木彬光の「成吉思汗の秘密」という推理小説があるし、かの「ルパン三世(第2シリーズ)」でも『ジンギスカンの埋蔵金』(第37話)という「義経=ジンギスカン説」を元にしたエピソードがあったくらいである。明らかに「今年は大河ドラマで『義経』やってるし、便乗して一儲けしちゃうもんね」的魂胆がうかがい知れる。

 で、この記事を書くにあたって、「義経 ジンギスカン」をキーワードにしてGoogleで検索してみると結構な数がヒットした。筆頭にあったのは大阪府立中之島図書館のページで、ここによると、

 最初に唱えたのは江戸後期に来日したあのシ-ボルトで、大正の終わり頃に一般的なものとなりました。

義経=ジンギスカン伝説が受け入れられた背景には実は中国大陸の利権を狙う当時の日本の社会的な風潮があったとされています。つまり、大陸に渡って開拓を進める日本人を鼓舞するために、かつてユ-ラシアを支配した偉大な先祖(つまりジンギスカンとなった義経のことです)がいたことにしようとしたのです。

〔中略〕

 最終的にこの伝説を決定づけたのが小谷部全一郎の『成吉思汗ハ源義経也』でした。 松山巖氏はこの本が出版された後の読者の声をまとめて、大陸に向かう日本人を鼓舞するのに大いに役立ったと指摘しています(「英雄生存伝説と日本起源論異説」『ユリイカ』1989年9月号)。

 ……とある。ここで触れられている「成吉思汗ハ源義経也」は1924年に出版されて当時のベストセラーとなり、「成吉思汗の秘密」のネタ本にもなったという(このあたりの経緯については毎日新聞のこのページに詳しい)。

 もちろん、この「義経=ジンギスカン説」は歴史上の定説ではない。おれの高校3年の時の担任でもあった日本史の先生はこの説を一蹴したものである。曰く「義経は小柄な体格と伝えられているが、ジンギスカンは天を突くような大男だったと伝えられている。たかだか数年でそんなに体格が変わるわけがない。たまたま義経が日本史から姿を消した年代と、ジンギスカンが現れた年代が近かっただけだ」。

 実際のところ、この説自体が状況証拠の積み重ねに過ぎず、推測の域を出ないのが実態である。とかく英雄の記録というものは美化されがちである(有名な「ひよどり越え」も後年の創作であるらしい)。逆に言うと、それだけ義経という人物が英雄視されている証拠でもあるのだろうし、歴史を研究する人々の興味をかき立てるのであろう。

 もっとも、事実は義経本人しか知らぬところであるのだが。

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コメント

須賀です。

義経。
味方に矢千本打たれて死んだだの、実は平家と同時にいなくなってただの、ほんまに謎の多い人物ですな。
テングになったっていう話も聞いたことがありますわ。

まぁそれだけエネルギッシュな人物やったっつーことには、変わりがないんでしょうね。
確かに、興味深々ですわ。

ではまた/

投稿: 須賀 | 2005.08.12 21:53

コメントありがとうございます。
いやはや、凄い説があったもんですねえ。いくらなんでも1人の人間に千本も矢を打ち込むのは物理的にムリってもんではないかと。第一そんなもん誰が数えたんだ(笑)。
本文でも触れましたが、とかく英雄という存在は美化されがちです。やはり「普通の人とは違う存在なのだ」的願望がそうさせるのでしょう(天狗になったなんて伝説もそのへんに根があるのかも)。
まあ歴史上の珍説・奇説って、無責任に楽しむ分には面白いですね。

投稿: ぶるない | 2005.08.12 23:55

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