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2006.06.10

エレベーター事故と「失敗学」

 高校生が上昇するエレベーターの扉に頭を挟まれて死亡するという衝撃的な事故から1週間、当事者たちは責任の押し付け合いを始めたらしい(YOMIURI ONLINE)。こうした事故が実際に起こり、責任の所在が不確かであれば、起こって当然の事態ではある。

 工学院大学の畑村洋太郎教授は、自著「失敗学のすすめ」の中でこう述べている。

 新聞沙汰になるような事故やトラブルが「ある日突然降って湧いたように現れた」などということは、そもそもありえません。〔中略〕最近多発する企業不祥事の原因を探ると、むしろ「いままでよく事件・事故が起こらなかった」という率直な思いにぶつかるはずです。

 同書で言及されているが、「ハインリッヒの法則」というものがあり、1件の重大災害の裏には29件のかすり傷程度の軽災害があり、さらにその裏に300件のヒヤリとした体験が存在する、という。「それみたことか」と言うべきだろうか、事故が起きた住宅を管理する港区住宅公社がこんな発表をしている(前出の記事より)。

 一方、区住宅公社は事故直後、業務日報を調べた結果として、03年12月から事故機を含む2基で19件の故障や苦情を確認したと発表した。だが、事故後行われた住民説明会では、ほかにもトラブルが起きていたと住民側から指摘され、9日の集会になって初めて03年4月以降のトラブルが計43件で、ドアが開かなくなるなどの重大事故も10件に上ることを明らかにした。

 やはり今回の事故は「起きるべくして起きた」としか言いようがないようだ。「利用者を不安にするような情報は隠せるものなら隠しておきたい」と考えるのは、運用する側からすれば誰もが思うことであろうから致し方ない(もちろんそれで済まされてはたまらないが)。

 かつてPTAのお歴々は、口を揃えてNHKの「プロジェクトX」を絶賛したが、ああいった他人の成功譚よりは「こういう経過をたどった結果、こうなってしまいました」という失敗のエピソードの方が後の人のためになるのではあるまいか。番組としてウケるかどうかは別として。

 畑村教授は「サイエンス・サイトーク いのちを守る安全学」で、失敗の原因を10種類に分類している(同様の分類は「失敗学のすすめ」でも行われており順番が若干異なるが、親本はこちらの方が新しい)。数字が大きくなるにつれてより高度な判断ミスとなる。

  1. 無知
  2. 不注意
  3. 手順の不遵守
  4. 誤判断
  5. 調査・検討の不足
  6. 未知
  7. 制約条件の変化
  8. 企画不良
  9. 価値観不良
  10. 組織運営不良

 当事者たちの責任転嫁が始まったところからすると、今回の事故は一番タチの悪い「組織運営不良」に該当しそうに思えるが、畑村教授はどう判断するやら。

 その後報じられていないが、事故が起きたエレベーターの中にいて、事態の一部始終を目撃してしまった人の精神的ショックも気がかりでならない。報じない方が当人のためではあるだろうが。

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