幻想に踊る視聴者
人間、どうしても楽な方に身を任せがちである。それでいて欲は深いので、「楽に痩せたい」とか「労せずにカネを稼ぎたい」などと考える。そうした煩悩に支配された結果、ある者は新しいダイエット法を模索し、またある者はギャンブルに走る。そんなココロのスキマに、さながら喪黒福造のごとく情報番組というやつが入り込んでくる。
情報が売りである以上、番組がウソをついてはいけない。これは作り手と受け手の暗黙の了解だ。それを「あるある」は土足で踏みにじった。あまつさえ、事前に「今度ウチの番組で納豆を取り上げるからよろしくね」といった主旨の情報が大手流通業者に流れていたという(livedoor ニュースより 上・下)から、消費者を馬鹿にしている。
落ち着いて考えれば、「特定の食材を多めに摂取するだけで、あとは普通に日常生活を送っていれば痩せられる」なんてことは話がうますぎる。それでも「あの番組で言っているのだから」という薄弱な根拠から、一片の疑いも抱かずに納豆の買い占めに走ってしまう視聴者の、なんとまあ哀しいことか。なんとなく昨年夏のハンカチ探しの騒動を連想してしまった。
それでも食材としての納豆にはなんの落ち度もない。悪いのはすべて、納豆を別な意味で「食い物」にしていた連中である。今回の騒ぎで苦手だった納豆が食べられるようになった人は、むしろソッポを向かないで積極的に食べてもらいたい。小売店も製造業者も大量の在庫を抱え込む羽目になって困っているはず。これを機にどんどん買ってあげれば困る人はぐっと減るだろう。
番組自体は捏造の発覚で打ち切りに追い込まれたが、「あるある」にこれほどの影響力が残っていたことのほうに、おれはむしろ驚いた。
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