ウルトラセブンとラフマニノフ
「ウルトラセブン」の最終話『史上最大の侵略(後編)』で、ダンが自分の正体をアンヌに告げるシーンに使われているのがロベルト・シューマン作曲の「ピアノ協奏曲イ短調 作品54」の第1楽章であるのは、ファンの間では有名である(その後戦闘シーンでも使用)。しかし、この選曲は次善策として採用されたものだった。
1983年刊行の「ファンタスティックコレクション No.29 ウルトラセブン SFヒーローのすばらしき世界」に寄稿した満田監督はこう語っている(明らかな誤字は引用者が訂正した)。
私の頭の中には、ダンがアンヌに「僕はウルトラセブンなんだ」と告白するシーンに絶対使いたいピアノのメロディがあった。ラフマニノフのピアノコンチェルトだ。ダビング(セリフや効果音、音楽等をミックする作業)の時に、音楽担当の冬木透にラフマニノフのピアノコンチェルトのレコードを持って来てもらって聞いた。違う! 私の頭の中にあるメロディとは全然違う。楽曲名を誤って憶えていたのだ。冬木透が別に持って来てくれたレコードから何かを選曲することにした。結局、シューマンのピアノコンチェルトになった。
……かくのような経緯をたどり、あのシーンに流れる曲にはシューマンのピアノ協奏曲が採用された。個人的な話になるが、この稿ではラフマニノフの名前が「ラフマニーフ」と誤記されていたため(この本は縦書きだった)、おれは長いことこの作曲家の名前を間違って記憶していた。朝日ソノラマも罪なことをしたものである。多感な時期にこの本に触れたおかげで、セブンとシューマンとラフマニノフは三点セットで頭の中に刻印されてしまった。日頃クラシックを聴く機会はほとんどないが、ラフマニノフの名前を聞くと「本当はあのシーンに流れるはずだったのはこの曲だったのかな?」と思うようになった。
昨夜放映された「のだめカンタービレ」で流れた「ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18」を聞いて、またも「ひょっとしてこれだったのか?」との思いに囚われた。ラフマニノフが作ったピアノ協奏曲は全部で5曲だから、満田監督が作曲者の名前を間違えて憶えていない限りはこの中のどれかということになる。冬木氏がその時に持参したレコードはそのすべてを網羅していなかったのだろうか? あの最終回の放映から40年弱、真相は闇の中である。
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