春が来る、汽車が逝く
春のJRダイヤ改正というと、どうしても鉄道会社側の「ここが便利になります!」と、鉄道ファン側の「あの列車が消えてしまう…」という二つの心情がせめぎ合う。2008年のダイヤ改正とて例外ではない。なかば年中行事と化した時刻表の4月号を買ってきても、“ダイヤ改正のあらまし”には「この列車を増発します」とか「どこそこ線に新駅が開業します」といった話題は載っていても、「この列車は廃止します」という話題は載っていない(列車の減便は載っているが)。
そうしてダイヤ改正が行われるたびに鉄道ファンの間で話題に上るのは夜行列車の去就問題である。ご時世からして、「減ることはあっても増えることはまずあるまい」と理屈では分かっているつもりでも、心情としてなじみのある列車が時刻表から消えるのは寂しいものだ。今回の改正では東京-大阪間の寝台急行「銀河」と、京都-熊本・長崎間の寝台特急「なは・あかつき」(ファンはまとめて『なはつき』と呼んだりする)が消える。
雑誌などで廃止が報じられると駆け込み需要と共に発生してしまうのが、一部のバカ者が起こす窃盗事件。これまた今年も例外なく起こってしまっている。3月6日のasahi.comより。
午前7時18分、大阪駅着。その後、銀河は新大阪駅近くにある車両基地で疲れを癒やす。検修(けんしゅう)担当の徳田一彦さん(44)は「古くて手がかかる車両。早く消えて欲しいと思ったこともあります。でも……」と寂しげにほほえむ。
〔中略〕
昨年12月に廃止が発表されてから、車両の側面にある「行き先字幕」や、車内の「車両番号標」「号車番号標」が相次いで盗まれた。心ない行為に憤りつつ、徳田さんたちは紙製の代用品を作ってしのいでいる。
「でもね、最後だけは正規の部品をかき集めて本来の姿に戻してやろうと思うんです。それが銀河へのはなむけですわ」
銀河の場合はヘッドマークがないので、こうした細々としたパーツ類が盗難の憂き目に遭い、車両の整備を担当する人を嘆かせることになる。いやだいやだとこっちまで嘆いているうちに、なはつきも難に遭ってしまった。3月11日のYOMIURI ONLINEより。
「なは・あかつき」は14日に発車する列車を最後に廃止となる予定。盗難届を受けた福岡県警門司署は、マニアが盗んだ可能性もあるとみて捜査している。
〔中略〕
8日朝、熊本市の熊本駅に到着後、同市の車両センターで後部の1枚がないのに整備会社社員が気付いた。
機関車は7日午後11時ごろから北九州市門司区の門司機関区に止められ、8日午前4時半過ぎに門司駅を出発していた。JR九州は、門司機関区周辺で盗まれたと見ている。
判で押したかのように「マニアが盗んだ可能性」と記事に書かれるのはやっぱり心外だなあ。記者の頭の中には“マニア=犯罪者予備軍”という焼き印が押されているんだろうな。
来春のダイヤ改正では「富士・はやぶさ」も廃止になり、東京発のブルートレインが消えるという。またこんな騒ぎが起きないよう、鉄道会社側でも自衛策を採る必要があるのではなかろうか? ファン一人一人のモラルが問われるのも当然のことではあるが。
追記:二方面さんのブログに車両番号標の盗難に遭ったあかつき車内の写真が載っていた。こうした不心得者、もとい、鉄道ファンの仮面をかぶった盗っ人の所業はまったくもって目に余るものがある。
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