2009.04.13

おくりびと志願

 映画『おくりびと』の影響で納棺師になりたがる人が増えているとか。asahi.comより

 映画「おくりびと」の米国アカデミー賞外国語映画賞受賞で納棺業者が注目されている。遺体に触る仕事として敬遠されがちだったが、映画では永久(とわ)の別れの演出者として描かれ、イメージが一変。不況下の就職難も手伝って「やりがいのある仕事」と求人への応募が相次いでいる。

 少々口の悪いことを言わせてもらうと、どんなに時代が変化しても死人が出ることだけは絶対に止められないわけで、食いっぱぐれない商売という見方もできる。そのあたりを考えに入れた上で志願する人もおそらくはいるに相違あるまい。

 映画の方は見ていないが、元になったという『納棺夫日記』は読んだ。さまざまな遺体に接するくだりを読むに付け、どうしても昨年初頭の弟の死が思い出された。

 あのときは葬儀社の人たちが納棺の儀式も取り仕切ってくれた。あのときは元から遺体に損傷などはなかったが、いつもそんな状況ばかりが回ってくるわけでもないだろうし、精神的に強くないと続けられない仕事だと思う。

 記事後半にはこんな記述もある。

 葬儀社の下請けで24時間対応。スタッフは社長を含む男性3人と女性8人だが、月に250件近く受注する中には厳しい現場もあり、「自分の心のコントロールが一番大事」と敏宏さん。仕事帰りの車内では努めて、明るく楽しいラジオ番組を聞くという。

 なんというか、思わず頭が下がってしまう。

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2008.11.12

1万2千円のアメ

 さんざんすったもんだした「定額給付金」の概要が「1人あたり1万2千円の給付」で固まった。とは言うものの、これが本当に低迷する日本経済を押し上げる起爆剤になると本気で信じているおめでたい人間がどの程度いるのだろう。

 今回の景気対策とやらも、結局のところ10年前の地域振興券がお色直しして出てきただけではないのだろうか。あのときは公明党のご機嫌取りを兼ねており(どちらが主でどちらが従か怪しいところである)、自民党側からも難色を示す意見が相次いだというが、今回は今回で選挙対策の臭いがぷんぷんする。「もうすぐ増税するから、今のうちに使っといてね」という魂胆なのだろうか。首相は近い将来の消費税率アップを明言してるし。

 どうにも煮え切らない感がぬぐえないのは、「国はカネを用意するだけであとの雑事は自治体まかせ」であるからだ。概要がなかなか固まらなかった要因のひとつである所得による給付制限まで地方に投げてしまっては、誰のための制度なのか分かりゃしない。よく「アメとムチ」という言い回しが使われるが、かくも露骨に「はーいアメですよー」とアメが提示される例もそうないのではあるまいか。

 ふと思い立って手元の辞書を引いてみると、飴には「(比喩的に)喜ばせて人をだますもの」という意味もあるそうだ(旺文社国語辞典による)。的確すぎて言葉もない。

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そういうことをどの口が言う

 現職の兵庫県知事の発言としてはあまりにも軽はずみで軽率な発言が飛び出した。asahi.comより。

   

井戸知事は「東京一極集中を打破するための旗を揚げなければならない」と前置きしたうえで、「関東大震災なんかが起これば(首都圏は)相当ダメージを受ける。これはチャンス」と発言。さらに「首都機能を関西が引き受けられる準備をしておかないといけない」などと述べた。

 知事としてどうこうという以前に、人としてどうなんだろう。明らかにこの発言の根底には「関東大震災ウェルカム」という意図が流れている。この調子ではヘタをすると祈祷師すら呼びかねない。問題発言連発の大阪府知事すら「不適切」と評しているあたり、常軌を逸している。

 この発言を受けたもうひとりの問題人物、東京都知事はこんなことを言っている。asahi.comより。

   

 石原知事は「他人の不幸をチャンスにするという表現は、日本人の感性になじまない。政治家は言葉が大事だ。東京の地震を期待されるなら、30年先の話かもしれないから、自分で関西の活力を取り戻す努力をしたらいいんじゃないの」と述べた。

 「政治家は言葉が大事」とはよくもまあ言ったもんである。日常茶飯事のように舌禍事件を繰り返す御仁には言われたくないものだ。石原都知事はこの発言を「バカ正直」と評したが、実態は単にバカなだけである。

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2008.08.09

一方その頃…

 世間的には北京オリンピックの開幕でちょっとした躁状態にあるようだが、その一方で実弾で勝負を始めた国がある。それはロシアとグルジア。

タス通信などによると、グルジア軍が7日夜から8日にかけて、同国からの分離独立を求める南オセチヤ自治州の州都ツヒンバリに進攻し、同自治州で平和維持活動を行うロシア軍司令部や兵舎などを空爆、戦車による砲撃も行った。

YOMIURI ONLINE

 オリンピックの開幕に際してはテロが懸念されていたけれど、そんなレベルじゃない国家間のケンカが始まろうとしている。やれ空爆だの戦車が砲撃だのとなると穏やかではない。「なにも開会式当日を狙ったみたいにドンパチ始めなくたって…」とも思うのだが、首相という「影の実力者」がモスクワにいないタイミングを見計らったとも解釈できるわけで、ケンカをふっかけた側の思惑は計り知れない。

 正直なところ、おれ個人は北京オリンピック自体に興味はないのだが、母国が殴り合いのケンカを始めてしまったロシアとグルジアの選手団の心中はいかほどのものなのだろう。「平和の祭典オリンピック」なんて言葉が陳腐で無意味なものに聞こえて仕方がない。

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2008.08.02

鬼ごっこもTPOは選びましょう

 学校が夏休みになると、はた迷惑な学生が変な事件をやらかしたりする。それにしたって、起こした事件の程度が幼稚すぎるとニュースを読んでいて頭痛がしてくる。YOMIURI ONLINEより。

 1日午後9時50分ごろ、茨城県高萩市高萩のJR常磐線高萩駅構内で、留置線に停車していた特急の屋根に上がった同県日立市内に住む県立高校2年の男子生徒(16)が架線で感電し、重いやけどを負った。

 友人2人と鬼ごっこをしているうちに駅構内に入ってしまったというのだから始末に負えない。「鬼ごっこ? 高校2年にもなって? それも夜中の10時前に?」いい歳こいて何をしているのだろう。他に遊ぶネタはないのか、茨城県北部の高校生は。鬼ごっこをするにしてもTPOっつうもんがあるだろうに。

 このトラブルで、常磐線は上下線が約50分にわたって運休した。おそらくはやけどした高校生も、彼を追いかけていた友人もたっぷりと油を絞られることになるのだろう。

8月3日追記地方版に詳報が載っていた。

 付近の住民らによると、少年たちは1年ほど前から深夜にバイクで大きな音を立てて現れ、大音量の音楽を鳴らして踊るなどし、住民から苦情が上がっていたという。

 なるほど、珍走団方面の人だったわけか。「少年たちは上半身裸で奇声を上げていた」の記述もあるところからして、おそらくは酒も飲んでいたのだろう。やけどだけなら「自業自得」の一言で済むが、電車が止まったとなるとたっぷりお灸を据えてやる必要があるだろうな。

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2008.07.05

「詐欺まがい」ってな、こういうことか?

 以前から気になってはいたが、今日の新聞に「詐欺まがいのネット広告」についての記事が出ていた。YOMIURI ONLINEより。

 「素人が1日20万稼ぐ法」「画期的な即金ノウハウ」――。そんなうたい文句の広告がインターネット上で増殖中だ。

 こうした情報商材の年間売り上げは総額200億円と推測されるが、「詐欺まがいの内容」との苦情も急増。多くの販売者が購入者に「あなたのブログに広告を張り付けて。売れたら報酬を払います」と持ちかけているのが特徴で、損をした人が元を取り戻そうと誇大広告をばらまき、別の人がまた損をするという構図になっている。「負の連鎖」の広がりに、「まるでネットのネズミ講」との声も出ている。

 個人的見解としては、「そんなものに引っ掛かる方が悪い」と考える。なんのリスクも負わずに楽して稼げるなら、誰が好きこのんでそんな方法を見ず知らずの他人に教えるものか。

 日頃RSSリーダーに引っ掛かってくる記事も玉石混淆で、実際のところ「石」の比率はかなり高い。もうタイトルからして露骨に怪しいのがずらずらと出てきて頭が痛くなる。

  • 圧倒的な実績と信頼!SEO対策のロングセラー「賢威2.0」。近日発売の「賢威3.0」への無償バージョンアップが可能!
  • 呆れるほどぶっ飛んでしまう 骨を使った直線運動上達法!! ゴルフ上達法革命とは !!

 こんなタイトルの記事が「心と体」のカテゴリーに入っていたら、絶対に怪しい(註:実例である)。ブログのアドレスを見てみると「dcggqt2txdwv」のように、明らかにデタラメにキーボードをタイプして作ったと判るものが入っていたりする。「実績と信頼」とやらが聞いて呆れる。

  • ■ サーフィンが最短で上達する方....
  • あなたを集客と販売のプロにするテ....

 こういうのも「書籍・雑誌」のカテゴリーにあった。なぜかタイトルが途中で切れている。サーフィン云々の記事は、別々のブログから同一の文面で投稿された痕跡があった。これも露骨な宣伝目的が見て取れる。クリックする物好きはどのくらいいるのやら。

 ここで例に挙げたものも含めて、この種の記事をぬけぬけと掲載しているブログの管理人は女の名前を名乗っているケースが多いようだ。「愛美」だの「彩香」といった源氏名みたいな名前の管理人にはご注意を。

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2008.06.19

「鉄男」って誰のこと?

 記事を読んだときから、順調に物事が運ぶとは到底思えないと感じたお話。YOMIURI ONLINEから。

 国土交通省は7月1日から、鉄道ファン向けの参加型ホームページをインターネット上に新設する。

 鉄道ファンの男女を表す通称「鉄男」「鉄子」からホームページ名をとり、「鉄男・鉄子のみなさんの部屋」とする予定だ。

 こんなものを行政主導でやられてもなあ、というのが第一の疑問。環境問題がぎゃーすか騒がれるご時世であるから、「もうちっと鉄道を見直そう」という気運が高まるのはいいことかもしれない。しかし、「今ちょっとしたブームらしいから便乗しちゃおうぜ」というせこい計算が動いているようにも思えてならないのも、あながちうがった見方ではないだろう。

 それにも増して腑に落ちないのは 鉄道ファンの男女を表す通称「鉄男」「鉄子」 という文言である。そもそも「鉄道趣味は男のもの」みたいな不文律があって「女性の鉄道ファンは珍しい」と思われていたからこそ、漫画『鉄子の旅』のタイトルから「女性の鉄道ファン=鉄子」という呼び名が定着したのではないのか? 鉄道趣味に首を突っ込んで随分経つが、男の鉄道ファンを「鉄男」と呼ぶなんて話は聞いたことがないぞ。そんな情報はどこに流通しているのだ? おれがもぐりなのか?

 記事の続きにあるサイトの内容にも、正直首をかしげざるを得ない。

 内容の一例としては、「日本全国鉄道お宝マップ」として、駅の名物や歴史などを紹介する。このほか駅員など鉄道を支える人々のエピソードや心に残る対応などを掲載する。

 そんなものは個人運営のサイトやブログにいくらでも転がっているではないか。なにも国民の税金で運営するサイトでそんなことをする必要はないだろう。一介の鉄道ファンの意見が直接行政サイドに届くようにする、という点では意義のあることかもしれないが、「こんなサイト作ってどうすんの?」と思われているようではサイトの先行きは明るくない。

 記事自体とは直接の関係はないが、この記事の下に「関連記事・情報」として「【社会】 東急線電車内で女性に触る、28歳の国交省キャリアを逮捕」という記事にリンクが張られていたのがなんともトホホ。ちったあマジメに仕事しろ、国土交通省。

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2008.06.08

電気街の殺人

 秋葉原で通り魔殺人事件が発生した。奇しくも2001年の同じ日に、大阪の小学校で児童らが無差別に殺傷されるという凄惨な事件が起きている。いやな偶然である。

 こうした事件の犯人は、判で押したように「(殺すのは)誰でもよかった」と口にする。今回も犯人は取り調べに対してそう答えたという。本当にそうなのだろうか? 事件が立件され、犯人が起訴されれば間違いなく弁護側は被告人の精神鑑定を要求してくるだろう。理由はもちろん「事件当時、被告人は心神喪失(もしくは心神耗弱)状態にあり善悪の判断能力がなかった」と主張するため。だが、仮にそう主張されたとしても裁判所は一蹴すべきである。

 犯人はレンタカーを借り、わざわざ地元から離れた秋葉原まで出向いて凶行に及んでいる。単に「誰でもいいから殺したい」のであれば、比較的近場である三島や沼津、秋葉原まで行かなくとも繁華街なら横浜や銀座でもよかったはずである。理由かはともかく「殺すのは秋葉原で」という明確な意図がそこにはある。そもそもまともな神経の持ち主であれば、「世の中がイヤになった」からといって無差別殺人に走ったりはしない。

 被害に遭われた人たちにお見舞い申し上げるとともに、警察に対しては厳しい取り調べをお願いしたい。

 この事件も他人事だと思っていると、「法律が発効になって間もない裁判員に自分が任命されて審理に当たらされる」可能性もゼロでないことをお忘れなく。

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2008.04.27

自殺報道の害悪

 このところ「硫化水素を発生させて自殺」という報道が目に付く。自室なり車なりを内側から目張りして、簡単に手に入るアレとアレ(ここに具体的な品名を記すのはやめておく。調べる気になればいくらでも情報は入手できるのだから)を混ぜれば有毒ガスが発生して、ホトケさんができあがる。

 タチが悪いのは、この方法で自殺した場合、死ぬ気のなかった周囲の人間に二次被害が出る危険性があるということ。企図した人間が気を使ったつもりで「有毒ガス発生中」と張り紙をしてみても、それが気づかれなければなんの意味もない。

 連日のようにこんな気の滅入るニュースが流れてくると、さも自殺者が増えているように思えてしまうが、それはおそらく気のせいである。「硫化水素を使わなければ別の手段で自殺に及んだであろう」ということくらいはメディアの側でも察してもらいたい。報道すること自体が自殺方法を声高に喧伝してしまっていることに、マスコミは気づくべきだ。

「自殺の連鎖」を止めるには、家族など周囲の人たち、自殺に使われた商品を製造する企業など総合的な取り組みが必要だ。

 ……などという寝ぼけているかのような記事を書いている場合ではない。この論法を突き詰めると「首つりに使われるからロープは売るな」とか「リストカットに使われるから包丁を売るな」とか「飛び降り自殺に使われるからビルを建てるな」といった無茶苦茶な理屈がまかり通ることになってしまう。

 手元にある『145人の自殺者』という本では、「自殺を食い止める報道方法」として以下のようなものを挙げている。

  • 全身麻痺や脳障害など自殺未遂者の悲劇を強調する。
  • 人間が如何にあっけなく死に、その逆になかなか死ねないということを強調する。
  • いじめ、ストレス=自殺という単純な連想を慎む。
  • プライバシーの問題が絡むが自殺者と精神疾患の関連を明確にさせる。
  • 「また自殺、ふたたび自殺」など自殺を日常化させるフレーズを使わない。

 文章の結びにはこうある。

 極論だが、最も有効な自殺防止策は自殺に関する報道はしないということになる。

 『完全自殺マニュアル』の類の情報を批判する前に、報道に携わる者として「何を報じ、何を報じるべきでないか」を考えるべきではあるまいか。

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2008.02.26

Magic play is dancing?

 asahi.comにこんな見出しの記事が載っていた。「「キャッツ・アイ」逮捕 20代の女怪盗3人 大阪」。リードの部分を引用する。

 大阪府高石市の民家に空き巣に入ろうとしたなどとして、高石署は25日、いずれも大阪市西淀川区に住む20代の無職の女3人を住居侵入の疑いで逮捕したと発表した。〔中略〕捜査員らは3人の女怪盗が登場する人気漫画にちなみ、容疑者らを「キャッツ・アイ」と呼んで取り調べにあたっていた。

 しかし記事を読んでみると、この3人は姉妹ではないし、狙った獲物が絵画専門だったわけでもなく、現場にカードを遺していたとか、盗みに入るときにレオタードを着用していたという記述もない。漫画の『キャッツ・アイ』とは「女3人組の窃盗団」という以上の共通項はない。大阪府警高石署の捜査員たちの安直きわまりない発想には猛省を促したい。まあ、通報があったときには誰かがお約束で「キャッツだぁ~!」と叫んでいたかもしれんが。

 「女3人の窃盗団」が「キャッツ・アイ」呼ばわりされるのであれば、「男3人+女1人のドロボー一味」を「ルパンファミリー」と呼ぶのも許されることにならんか? ……それは許されざる一線という気もするぞ。

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