2008.04.26

ふたたび脳外科の日々と荒療治

 体調の異常を自覚したのは14日のことだった。カウンセリング前にラーメン屋でお昼をずぞぞぞと食していたときのこと。後頭部に凝ったような痛みがおき始めた。「あれ、これは手術直後に出ていた症状なのでは…?」とか思っているうちに時間の経過とともに痛みは強くなり、夜には我慢できないものになった。

 こりゃかなわん、と翌日には脳外科に直行(幸いにも主治医の先生が外来に出ていた)。体を起こしているのがしんどい中、こういうときに限って何時間も待たされたりするのはたまったものではない。それまで170に設定されていたバルブの圧を190に上げてもらって当日は帰ったのだが症状は治まらず、2日後には再度外来を受診した。

 主治医のI先生は「こうなったら最後の手段」と前置きして、バルブの圧設定を最大の200に上げた。「あのー、これで症状が改善しなかったらどうするんでしょう?」と訊いてみると、シャントを抜くことも選択肢のひとつとのこと。

 幸いこれである程度症状は軽くなったので、首が痛いのを我慢しながら21日には新しいデジカメを物色してみたり、22日には「内容がないよー」な映画(当初の予定通りVシネでよかったんじゃないのか?)を見に行ったりしてみた。不思議なことに、これが荒療治として効果があったのか、その後で一眠りしたところ、さらに症状が軽くなった。

 それでも頭痛と耳鳴りが治まらないので、24日に3度目の受診をした。体を起こしていなければ首の痛みは起きないので、シャントのどこかが目詰まりしているということではないとのこと。I先生の診断によれば頭痛は首の筋肉の凝りが原因らしく、服薬と貼り薬で症状を抑えることができるという。

 これで2年ぶりに苦しめられた症状からはようやく解放されたのであった。はぁぁぁ。くそー、なんで今ごろになってあの症状が出てくるんだよぉ。

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2007.07.31

『そこが知りたい「脳の病気」』

 このブログでも何度か触れたが、昨年生まれて初めて体にメスが入った。しかも頭。入院自体が物心ついて初めてのことだったので、脳外科という診療科目の内容に興味を持つことになった。そんなわけで手に取ってみたのが医学博士の天野惠市氏が書いた『そこが知りたい「脳の病気」』である。

 おおよそひとつの症状についてひとつの章が割かれており、中には「それも『脳の病気』の範疇なの?」というものもあるが(頭部外傷や首・背中・腰のけがなど)、テレビへの出演もあるという筆者らしく、かみ砕いた表現で書かれている。ただ、読点を多用しがちなのはかえって読みづらくしているような気もする。それから、病名やら部位の英文表記を逐一付記する必要はあったのか? んなもんよりも図版のひとつも入れてほしかった。専門家でもない人が「第3-第4腰椎間」なんて言われたときに具体的な場所をピンポイントで理解できるとは思えないぞ。

 入手して真っ先に開いてみたのはやはり「水頭症のはなし」である。自分と関係の深い話題に最初に食いついてしまうのは、これ人情だと思う。天野氏の記述によると、おれが施術された脳室腹腔シャント術という手術はこういうものである。

頭の中で吸収しきれなくなった髄液を、細くてやわらかいチューブを皮下に通して、おなかの中に導き、腹腔内で腹膜から吸収させる。腹膜が持つ大きな吸収能力を活用する手術である。頭の中から、いっきに髄液がおなかの中に移行すると、まずいことが起こるので、髄液の流れを、圧にしたがって自動調節する小さなバルブが途中についている。

 手術した箇所が箇所だったし、上記のような手術をしたので本人はほとんど改造手術でも受けたかのような気分にもなったのだが、これに続く「脳外科では頻繁に行われる小手術のひとつである」という一文はちょっとした衝撃だった。「あれだけのことをしても小手術なのか?」と。落ち着いて考えれば、手術に要した時間は実質小一時間だし、検査と術後を合わせても入院期間は半月程度であった。広範囲にわたって頭蓋骨を切開したり、長い期間のリハビリが必要な症状で入院してくる人もいるのだから、脳外科の医者の視点からすれば「小手術」なんだろうなあ。

 ともあれ、脳外科の意外な守備範囲の広さにも気付かされる一冊である。

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2007.04.03

退院後の経過報告・その8

 以前「退院後の経過報告・その7」では「次は半年も先ですかあ」とこぼしていた検査の日であった。「3月には予約だ3月には予約だ3月には予約だ」と、さながら射撃訓練中の碇シンジくんのような状態だったせいか、うっかり予約し忘れることもなくしっかり検査を受けてきた。

 約半年ぶりの脳外科であったが、相変わらず待合室はけっこうな人混み。ではここで、ぶるないの検査手順をもう一度見てみよう(ナレーション:政宗一成)。

 保険証と診察券を受付に出して、CT室から声がかかるのを待つ。名前を呼ばれたら(この病院は患者の名前を「さま」付けで呼ぶ。もう慣れたが、それまではなんだかこそばゆい思いをしたものだ)部屋へと入り、眼鏡と上着と荷物をカゴに入れて機械の上に横になる。この検査自体幾度となくやっているので、こちらも慣れたものだ。頭を軽く固定すると、技師は別室へと引っ込んで機械が動き始める。あとは5段階くらいずつカメラが動いて頭の断層写真を撮り、検査自体は終わりである。

 その後主治医の診察になるが、血圧を測ってから診察室からお呼びがかかるまでおよそ1時間。本を読んだり待合室のテレビを眺めたり考え事をしたりしながらひたすら待つ。名前が呼ばれる頃には待合室で順番を待つ人もだいぶ減っている。

 そして半年ぶりのI先生とのご対面。前回の検査時の写真と今回のものを比べたが、脳室の大きさには変化がないそうだ。「体を起こしているとたまに頭痛がするんですけど」と訴えたところ、それは本来の髄液のルートが完全にふさがっていないために、手術で通したルートの分を含めて髄液が余計に流れるためらしい。今回も頓服の鎮痛剤を処方してもらう。次回の検査はまた半年先の10月。「それで異常がなければ次は1年後ということにしましょう」とI先生は言っていた。忘れずにいられるだろうか。

 薬を受け取るために病院にほど近い薬局に行くと、そこには処方箋の自動受付機(処方箋を入れると銀行の窓口のような受付票が出てくる)なるものがあって、大いにおれを驚かせた。この薬局、名前がふざけてるようで(敢えて名は伏せる)意外に技術の先端を行っている。

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2007.01.07

箱根駅伝を走ったお仲間

 年末年始のローテンションのせいで書きそびれていたが、幼少期に水頭症の手術を受けた選手が箱根駅伝に出場していた。その選手は日体大の6区を走った石谷慶一郎くん。

 彼の場合は先天性の水頭症であったらしい。おれも同様の症状で都内の病院に入院したことがあるのだが、いつの間にか脳室の大きさが正常になったらしく(幼少期の水頭症では、頭蓋骨がくっついていないために頭そのものが大きくなるという)、手術は行われないまま退院した。両親はこのときのことが頭から離れなかったらしく、その後もおれが「頭が痛い」などと口にすると「検査してもらった方がいいんじゃない?」と切り返したものである。そうして長いこと大過なく暮らしてきたのだが、昨年になってついに手術を受ける羽目になった(経緯に関しては「水頭症」のカテゴリーにまとめたのでここでは触れない)。ニュースサイトなどで報じられているところによると、石谷くんが受けた手術もおれと同じ「脳室腹腔シャント術」であったようだ。

 たしかに水頭症の症状はこの手術でどうにかなる。しかし体内に異物を埋め込んでいる以上、それがいつトラブルを起こすかは分からない。折悪しく石谷くんの身にそのトラブルが降りかかったのは全国高校駅伝の当日だった。彼の不調のためにチームは棄権を余儀なくされ、石谷くんは「自分のせいで…」と自責の念にさいなまれたという。同様の手術をしている人には誰にも起こりうることなのだが。

 そんな無念を、彼は箱根の山くだりでの力走にぶつけたのだった。これが報じられることで、水頭症という病気の世間への認知度も上がるのではないだろうか。それにしても、自分と同じ病気を持った選手が箱根駅伝で走っているというのは妙な仲間意識を持たせてくれる。

 来年も出場するときはちゃんと見るからな、石谷くん。お互いがんばろうぜ。

2008年1月3日追記:今年も石谷くんは6区を走ったが、14位からひとつ順位を上げたにとどまり、走っている姿もほとんど撮してもらえなかった。日体大も総合順位は12位でシード権を失った。残念。

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2006.10.31

退院後の経過報告・その7

 今日は毎月最終火曜日の恒例となっていたCT撮影の日であった。以前「その5」「その6」で触れたように、頭の中に出血が見られたために月に一度のペースで経過を診ていたのである。今日撮った写真では問題になっていた出血のあともすっかり消えていたので、主治医のI先生から「月一のフォローアップはもう終わりにしていいと思います」とのお墨付きを頂戴した。元からふらつきなどの症状は出ていなかったので気にしてはいなかったのだが。

 それでも「体内に異物を埋め込んでいる」ことに変わりはないので、これまでほど頻繁にではないにしろ継続して診察を受ける必要はある。次回は来年の4月だそうだ。係のお姉さんに「3月に予約を入れてください」と言われたが、忘れないでいられるだろうか?

 どうやら今度こそ――少なくともこの先半年間は――このタイトルで記事を書くことは打ち止めになりそうだ。ふぅ。

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2006.08.08

退院後の経過報告・その6

 前回のCT撮影で「もや」のようなものが写ったために、ステロイド剤を投与して2週間様子を見た。前回の診察時によく聞いていなかった(それって当事者としてどうなんだ?)「もや」のようなものは脳内の出血で、今回の検査では白っぽく写っていた箇所が影のようになっていた。所見によれば出血は収まったらしく、影のように写った部分もそのうち吸収されるとのことで、ひとまず投薬による治療もストップということになった。ただ、まだどのくらいの期間をおいて経過を診る必要があるのかI先生も測りかねているらしく、月末にはまたまたCT撮影という。

 脳内での出血となると、ふらつきや握力の低下などの自覚症状が出るらしいのだが、当のおれにその手の症状が出ていないので先生も当惑気味のようである。なにぶんにも「異常な状態」の方がそうでない期間よりも長いのだから致し方ないのかもしれない。

 ……というわけで、この「経過報告」はまだ終わらせてもらえないようだ。

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2006.07.25

退院後の経過報告・その5

 ……あれっ、「その4」で打ち止めのはずじゃなかったか?

 ひと月前にCTを撮って、ひとまずこれで安心、と高をくくっていたのだが、今日ひさしぶりに通院して断層写真を撮ってみたところ、写真に妙な「もや」のようなものが写っていた。先生の話によると、病状が長期にわたったためにこのような症状が現れてきたものらしい。

 主治医のI先生は、治療法を説明するのに「この治療法が効かない人もいます」ということを口にする(可能性の問題として)。治療部位が部位なので、慎重になるのも分かるのだが、医療事故が起きてしまっては取り返しが付かないという心情も理解はできる。

 で、今回のケースの場合、ステロイド剤の投与でどうにかなる場合と、どうにかならずにまたもや外科手術という可能性もあるという。なにせ患者本人に自覚症状がないだけにタチが悪い。正直言って「もう勘弁してくれ」である。そりゃ先生が症状をコントロールしているわけではないので誰も責められないのだが、どこかに責任のやり場を持って行かないと堪らないというのも患者の心情としてはある。

 ひとまずはステロイド剤を1週間投与、来週と再来週の通院時に薬の量を減らして、またもやCTの検査という手筈になっている。あーあ、おれの体ってどうなっちゃってるんだろう。

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2006.06.22

退院後の経過報告・その4

 前回の診察から2週間、またまた術後の経過を診るために病院に出向いた。

 今回は診察前にCTの撮影を行った。これは前回バルブの圧を調整したためである。I先生の話によると「前回撮ったCTを見たところ、頭の内部に水が溜まっている箇所があったので圧を上げた」とのこと。その水が溜まっていたという箇所も、今回撮ったCTではなくなっていたそうである。

 その他にも現在の容態について訊かれたが、ひと月ほど前からさんざん悩まされてきた「頭の中で低音がぶんぶん」現象がほとんど収まっていること、歩行時のふらつきがないことなどを話した。体調的には術前とほとんど変わらないと言ってもいいだろう。

 今後も頭部のCT写真を撮るために定期的(次回は1ヶ月後)に通院しなければならないが、体調に異常が起きない限りはバルブ圧調整の必要はないようである。

 ……というわけで、このタイトルで記事を書くのは今回で最後になりそうだ。あとは手術の跡が分からなくなる程度まで髪が伸びてくれれば、ひとまず事態は収束である。やれやれ。体調の異常をおおっぴらにして以降ご心配をおかけした方々に無事を報告して、ひとまず一連の「経過報告」を締めることにしたい。

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2006.06.08

退院後の経過報告・その3

 術後1ヶ月経過の様子見と、先日の「つうこんのいちげき」の診断結果を聞くために病院へ行ってきた。

 診察室に通されるなり、目に入ってきたのは先日撮った脳の血管の写真であった。ずらっと並んだ写真を見て、内心で「おいおい、ずいぶんフィルム使ったんじゃねえのか?」と思ったのはナイショである(当然フィルムの使用量は診療費に跳ね返る)。造影立体CT検査の結果は「異常なし」。ふう。

 その後は現状を訊かれる。「頭の中で低い音が断続的にぶんぶんいっている」こと、「なんだかよう分からんが背中のあたりが痛い」ことなどを伝える。そこで、腰のあたりのX線とCTを撮ることとなった。なんの因果で「脳外科で腰のX線写真」を撮らねばならんのか。CTは術後の経過を見るためと思われる。

 腰は一部の間隔が狭まっているために痛みがあるのであろうとのこと。脳室は術後順調に通常の大きさになりつつあるという。というわけで、痛み止めの薬と湿布を処方するということ、毎度おなじみのバルブ圧調整で現在の150から170に上げるとのこと、2週間後にまたまたCTを撮ること、以上が申し渡された。

 いろいろと検査をしなければならないとはいえ、診察室→レントゲン室→CT室→診察室(2度目)→レントゲン室(さっきとは別の部屋)と、あちこちの部屋に行かなければならないのはさすがに面倒ではあった。

 その後の薬代を含めると前回の検査時よりもさらに費用がかかったが、これは予想の範囲内だったのでダメージは小さくて済んだ。次回はまた2週間後である。

 それにしても、「頭の中で低い音が断続的にぶんぶんいっている」のは耳鼻科の守備範囲なのだろうか? バルブ圧調整の後も止まらないんだが。できれば耳鼻科には行きたくないなあ。

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2006.06.06

脳外科受診心得

 ふと気が付いたら、水頭症の手術からもう1ヶ月が過ぎる。さすがに手術直後ほどひどい有様ではないものの、手術前と変わらない体調ではないこともまた確かである。術前の検査を含めると約半月ほど入院していたわけだが、自分の体験を通して、脳外科を受診するにあたっての心得などを書き残しておこうと思う。役に立つかどうかは保証しないが、参考までに、ということで。

 まず「どんな症状が現れたら受診すべきか」。もちろん人によって異なってくるが、症例としては次のようなものが挙げられる(病室で同室になった人の症例)。

  • 頭痛と歩行時のふらつき(これはおれの場合)
  • 酔ってもいないのに呂律が回らなくなる(ラ行やパ行に顕著らしい)
  • 片方の握力が極端に落ちたり、足が上がらなくなったりする

 最初に挙げたものは水頭症、あとの二つは脳梗塞の症状である。こんな症状が現れたら、すみやかに脳外科を受診されたい。

 では「どこの病院を受診すべきか」。もちろん通院することを考えれば近いに越したことはない。心当たりがない場合は救急車を呼んでもいいし、重篤でないなら最寄りの消防署に問い合わせて救急告示病院を紹介してもらうのもひとつの手(後者の場合は事前に病院に連絡を入れることを忘れずに)。

 診る場所が場所なので、「診察後に即入院」というケースが往々にしてあることは心得ておいた方がいいだろう。おれもそうだったが、「いきなり入院と言われて驚いた」という声は何度も聞いた。

 行きがけの駄賃というわけではないが、入院に際して「あったらいいもの」も挙げておく。おそらくは入院時に「これは自前で用意してくださいね」というお達しが病院側からあると思うが、その種のリストには載ってこないであろうものをここでは挙げる(小林光恵『気分よく病院へ行こう』を参考にした)。

 ウエットティッシュ。普通のティッシュもあった方がいいが、雑巾の代用品になったりするので重宝する。

 筆記用具。入院中はトイレに行った回数を毎朝訊かれる。「いちいち憶えてなんかいられるか」という人は、ノートに正の字を書いて数えておけば訊かれたときに即答できる(経験談)。また、経過や思ったことなどを日記代わりにメモしておくのもいい。ただし、いくら便利だからと言ってノートパソコンは持ち込まないこと。うっかり盗難にあったりしたら経済的損失もさることながら、個人情報の漏洩も怖い。病院は盗難に関しては責任を取ってくれない。

 読み物。やはり漫画よりは活字の方がいい。ヒマを凶器にして人を殺せるなら、入院患者はヒマのせいだけで何人も死んでいるだろう。おれが入院したところではテレビが有料だったので、際限なくテレビを見続けるわけにもいかなかった。「音楽がないと寂しい」という人はMP3プレイヤーを持ち込む手もある(CDやMDと違ってメディアを交換する手間が省ける)。

 薬用リップクリーム。病院内は空調が効いているので、けっこう空気が乾燥している。冬場に唇がかさつく人は用意しておいて損はない。喉も渇きやすいので、制限されていなければ水分が取れるようにしておくことも大事。

 耳栓。個室の場合はともかく、他の人と同室になって、その中にいびきのうるさい人がいたりすると寝不足に悩まされることになる。消灯時間も21時ごろと早いので安眠を確保するための保険として。旅行用のアイマスクもあるといいかもしれない。

 以上、どこまで役立つかは分からないが脳外科入院経験者からのアドバイス。「気分よく病院へ行こう」は、他の診療科目についても有用な情報が書かれているので読んでおくことをお勧めする。

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